【執筆のモチベーションを保つ方法】もの書きは走った方がいい説
「もの書きは走った方がいい」説
皆さんは、執筆のモチベーションを保つためにどんなことをしていますか?
小説を書いているけれど、最近、煮詰まっちゃって……。
部屋で過ごす時間が長いせいか、あまり筆が乗らないなあ。
とお悩みのことはありませんか。
そんなときの気分転換の方法としておすすめしたいのが、「ジョギング」です。
実は、もの書きの暮らしと適度な運動は、かなり相性がよかったりします。
今回の『もの書き暮らし』は「もの書きは走った方がいい説」について検証してみました。
昔も今も、文豪や作家のなかには「運動」する人がいる
もの書きや読書ってインドアな趣味の代表格だから、運動の習慣なんてべつに要らないんじゃない?
むしろ不健康でも、本人が好きなように暮らして、好きなように書くからいいものが書けると思うな。
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
とくに大正期から昭和にかけての日本文学の主流は私小説で、ダダイズムや無頼派といった作家たちの人生が強烈な印象を放っているでしょう。
太宰治や坂口安吾、中原中也といった文豪たちの名前を挙げれば、何となく想像がつくかと思います。
彼らにしか書けない文学を書いたことにまったく異論はありませんが、「あと、もう少し生きていれば、どれほどの作品が残っただろう?」といち文学ファンとしては考えてしまうのです。
その一方で、運動することを生活習慣にしていた作家がいます。
たとえば、現代では村上春樹さんがランニングを習慣にしていることは有名な話ですね。
過去の文豪では、三島由紀夫が筋トレやボディビルに励んでいました。
余談ですが、三島由紀夫は太宰治に対してこんな発言を残しています。
太宰のもっていた性格的欠陥は、少くともその半分が、冷水摩擦や器械体操や規則的な生活で治される筈だった。生活で解決すべきことに芸術を煩わしてはならないのだ。
(『小説家の休暇』三島由紀夫著より引用)
もっとも太宰治の方は、若い頃の三島と対面したときに、
そんなことを言ったって、こうして来てるんだから、やっぱり好きなんだよな。なあ、やっぱり好きなんだ。
(『私の遍歴時代』三島由紀夫著より引用)
と返したエピソードもあり(諸説あり、ほんとうは「きらいなら、来なけりゃいいじゃねえか」と言ったという説。三島は記憶を美化した可能性がある)、どちらにしても太宰の方が一枚上手だった話ではあります。
海外に目を向けると、フランツ・カフカは執筆前に散歩と運動をする習慣がありました。
小説家ではありませんが、哲学者のカントは決まった時刻になると散歩に出かける習慣があったのは、教科書にも載っていますね。
京都には「哲学の道」があり、日本の哲学者・西田幾多郎が思索を巡らしながら歩いたことで有名です。
このように適度な運動は、作家やクリエイターの想像力と密接に結びついていることがあります。
では、もの書きにとってジョギングのメリットとは何か、ちょっと見ていくことにしましょう。
もの書きが「ジョギング」するメリット
もの書きにとってジョギングする主なメリットは、
①執筆の体力を付ける
②頭の中の考えごとを整理できる
③一人でも取り組みやすい
この3つです。
①執筆の体力を付ける
ものを書くことって基本的には地味な作業です。机に向かってノートを広げて筆記したり、あるいはノートPCなどのデバイスでタイプしていく。
それぞれの執筆スタイルにもよりますが、少なくとも1〜2時間くらいは椅子に座って、文章を思い浮かべながら書いていきます。
一見、簡単そうに見えるんだけど、これを続けていくとなると、それなりの集中力やモチベーションを維持する方法を編み出す必要がある。
作家やもの書きと言えども、生身の人間ですから、「さあ、書こう」というときに、毎回毎回、体調を崩していては筆が進まないわけです。
もちろん、ちょっと走ったからといって、それで文章が上手くなるとか、そういうことではないのですが、体調が整いやすくなるメリットはある。
外で体を動かすようなお仕事をされている方は、日中で運動量を確保できているので、帰宅後はそのまま執筆という形でも、バランスが取れています。
僕の場合は在宅のライターで、室内でのPC作業が多いので、他の在宅ワーカーの方と同様に、意識的に外で体を動かす機会を作らないと、身体的にもメンタル的にも支障が出やすいことに気がつきました。
「仕事終わり→休憩→ジョギング(30分〜1時間)→シャワー、水分・栄養補給→執筆→就寝」の流れがいいかなと思います。
走るといっても、毎日走っておく必要はなくて、走りたいときに週1〜2日程度のジョギング・ランニングで十分だと思います。
理想は「1日走って、1日休み」の週3回が健康にはよいそうですが、マラソンランナーになることが目的ではなく、体調を整えて執筆の基礎体力を付ける、というのが、もの書きランナーの名目です。
なので「週1〜2日、走りたいときに走る。たまにちょっとだけ頑張ってみる」ぐらいでいいのではないでしょうか。
週に1〜2回でも走っておくと、普段が在宅ワークでもご飯が美味しく食べられます。
普段の食事で以前ほどカロリーを気にしなくて済むので、結果的に栄養を摂りやすくなり、気力が充実していきます。
さらに運動したあとは、頭がクリアになっている状態で執筆ができるので、原稿も進みやすくなるでしょう。
体を適度に動かしたことによって、寝付きもよくなり、結果的に体調が整って、原稿が捗っていくという好循環が生み出せます。
走ったあとの栄養補給にはプロテインドリンクがおすすめで、アミノ酸の疲労回復だけでなく、タンパク質や鉄分、葉酸・食物繊維、ビタミンの補給でメンタルヘルスケアの効果も期待できます。
最近は、抹茶やブルーベリー風味のプロテインなど、美味しいフレーバーの種類があって、ジョギング後のデザートドリンクのように楽しめます。
人工甘味料不使用のホエイプロテインなど、健康志向のプロテインも販売されているので、シェイカーと一緒に揃えておくとよいでしょう。
②頭のなかの考えを整理できる
家のなかにいればいるほど、考えが煮詰まってどうにも動けなくなってしまうことってありますよね。
スマートフォンやネットの普及で、ついYouTubeの動画を観てしまったり、SNSやアプリゲームに時間を費やしてしまうこともあるでしょう。
ただそれらの受動的なコンテンツというのは、要するに「情報」なので、頭が混線している状態になり、創作のときの文章は浮かびにくくなります。
もちろん、興味関心のあるコンテンツや役立つ情報もあるので、「メリハリ」を付けて楽しむのが一番いいわけです。
家の中で、「今日はあまり文章が書けないな」となったときに、どうしても誘惑が多くなりがちなので、いっそのこと家を出て近所を走った方が、頭が冴えてきます。
よく走っている間に「思考が整理される」と言いますが、この言葉は半分当たっていて、半分間違っていると僕は思います。
というのも、走っている最中って何にも考えない、真っ白の、ただ走ることに精一杯になっている状態なんですね。
「頭が整理される」のは、走っている最中ではなく、「走ったあと」なんです。
たとえば、家のなかでぐるぐると考え込んでいるときって、色んな「情報」がせめぎ合っていて、絡まった糸のようになっています。
おそらくこうしたときに「論理的に糸を辿っていく」ことってあんまり役に立たなくて、いっぺん放り出しちゃった方がいいみたいです。
そういうときにランニングウェアに着替えて、余計なことは考えずにぱっと出ていく。
すると家の中であれやこれやと考えていたことが、だんだん遠ざかっていって、走っている間は忘れてしまえる。
これは「思考の整理学」という昔、流行った本にも書いてあったことですが、現代って何でも知識や情報を頭のなかに詰め込もうとする。
でも、それって頭脳にとっては不自然な状態で、ほんとうは「忘れて」しまうぐらいがちょうどいい、健康な状態だと。
走っている間は、頭のなかが「空白」に近づいてくる感覚があって、ノートを更地にしていくような作業なんですね。
創作は「余白」がないところからは生まれてこないので、まず日常の悩みとか論理とか、そういうものを一回、忘れてしまう必要がある。
べつにほんとうに忘れるわけじゃないから、「忘れたフリ」でもいい。一旦、日常生活の悩み事は脇に置く。
ジョギングやランニングを終えたときって、そういう空白の状態に自然と自分を近づけることになるので、「これから文章を書きます」っていう執筆モードに入るときに、言葉が出やすくなる。
おまけに走ったあとは、シャワーを浴びてリラックスしているし、水分と栄養補給を済ませたあとなので、コンディションが整ったところで書いていけます。
街中で「あの人、なんで走ってるんだろう」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはこれだけのメリットがありますから、やらない方が損になるんですよね。
これまで走ったことがない方も、最初は「歩くだけでもいい」ので、挑戦してみるといい趣味になるかもしれません。
おすすめは、ASICS(アシックス)のウェアとシューズです。
ベーシックな機能を持ったジャージやトレーニングパンツが良心的な価格で提供されているので、初心者の方にも◎のスポーツブランドです。
Amazonだと、セールで値引きされていることも多いので、入手しやすいところもいいポイントです。
スマートフォンやBluetoothイヤホンなどを持って走りたいという方は、サロモンのランニングベルトなどもおすすめです。(購入の際はサイズにご注意ください)
③一人でも取り組みやすい
ものを書く人って、僕は孤独だと思っています。
あんまり誰かと人付き合いもしないし、自分のペースでものごとを考えたいと思う人が、もの書きには向いているんじゃないかなと思います。
そういうひとにとって、ジョギングやランニングっていうのは、単純に相性が良くて、マイペースに一人で続けられるいい趣味になるんですね。
学校の体育の授業やマラソン大会ではないから、行き先はどこへ行ってもいいし、途中でやめたっていいし、走りたければ好きなだけ走ればいい。
これが二人以上で行うチームスポーツだと、お互いに協調したり、ときには自分を犠牲にしてでもチームを勝たせるプレーも必要になる。
試合をするには頭数を揃える必要もあるし、あんまり気楽にはできないかなと思います。
とくに大人になってからは、みんな社会人になっているので、週末に日程を揃えるだけでも苦労するはずです。
その点、ジョギングやランニングっていうのは、一人で好きなペースで行って、好きな時間に帰ってくることもできる。
もの書きって、スポーツに例えるとするなら、どう見ても個人競技だし、ひとりでスタンドプレーをして、観客を沸かせ続けるのが、「もの書き」っていう競技だと僕は思います。
もちろん、周囲で支えるひとはいるかもしれないけど、でもやっぱりノートに文章を綴っていくときは誰も助けてくれない。
走るときは自分の身体で走っていくしかない。ほかの誰も替えが利かない。
だから走ることと、書くことはとても似ているなと思います。
たまには童心に帰って、河川敷や公園など自然のあるところで、走ってみてはいかがでしょう。
無心になって走ってみると、家に帰ったときに忘れていたものに気がつくかもしれません。
ものを書きたいと思う気持ちに。
2024/03/16
kazuma