伝説の鉛筆『BLACKWING(ブラックウイング)』について語ろう
伝説の鉛筆、「BLACKWING(ブラックウイング)」とは?
BLACKWING(ブラックウイング)という鉛筆をご存じでしょうか。
僕は小説を書く時に最近、「BLACKWING602」という鉛筆を使っています。
「602」というのはBLACKWING(ブラックウイング)が出している鉛筆の型番で、元々のモデルになったオリジナル版の鉛筆は、トルーマン・カポーティが執筆に使用していたという逸話があります。
僕はカポーティの作品が好きなので、それにあやかって「BLACKWING602」の復刻版を使っています。
ところで、BLACKWINGの鉛筆の歴史は長く、かつては著名人がこぞって使用した「伝説の鉛筆」だったと言われています。
今回は、BLACKWINGという鉛筆の歴史を簡単におさらいするとともに、現在も復刻版として発売されているBLACKWING「602」「Pearl(パール)」「Natural(ナチュラル)」「Matte(マット)」の書き味を実際に比べてみました。
他にも、BLACKWINGの鉛筆を使う時に役立つアイテムを併せてご紹介しています。
BLACKWINGの鉛筆を執筆に使ってみたい、興味がある、という方はよかったら参考にしてみてください。
BLACKWING(ブラックウイング)の鉛筆の歴史を辿る
BLACKWINGの歴史は、元を辿ると1930年台まで遡ると言われます。
最初にBLACKWING602のモデルを出したのは、ドイツのエバーハード・ファーバー社でした。
「ファーバー」という名前にピンときた方もいらっしゃるかもしれません。
同じく筆記具ブランドとして有名な「ファーバーカステル」の創業者カスパー・ファーバーの子孫のひとりが、エバーハード・ファーバーです。
BLACKWING602のモデルが出たのは、1934年のことで、アメリカで鉛筆事業を展開していたエバーハード・ファーバー社より発売されました。
「Half The Pressure, Twice the Speed(筆圧は半分、筆速は二倍)」をうたい文句に、当時の芸術家や文化人がこぞってこの鉛筆を愛用したといいます。
オリジナル(エバーハード・ファーバー社)版のBLACKWINGの愛用者のリストには、「ディズニー」創業者のウォルト・ディズニー、「怒りの葡萄」を書いた作家のジョン・スタインベック、音楽家のレナード・バーンスタイン、建築家のフランク・ロイド・ライトなど、挙げればキリがありません。
海外作家の愛用者として有名なのは、ウラジーミル・ナボコフ、そしてトルーマン・カポーティだろうと思います。
BLACWING602が販売された1930年代のアメリカは、大恐慌の最中でしたが、通常の鉛筆の約三倍もの値が付いていたにも関わらず、その品質の高さから芸術家や文化人の間で注目を集めることとなります。
このエバーハード・ファーバー社が販売するオリジナルの「BLACKWING602」というのは、1998年に販売が終了しており、市場には現存していません。
現在、販売されているBLACKWINGは当時のモデルの復刻版で、パロミノブランドにより復刻されました。パロミノ版のブラックウイングは、2010年頃より販売が開始しています。
復刻されたBLACKWINGの特徴は、木軸に北米産の上質なインセンスシーダーを使用しており、鉛筆の心臓とも言える黒鉛は何と日本製(!)。ちょっと応援したくなる鉛筆です。
復刻された「BLACKWING」の名に恥じることのない鉛筆に仕上がっています。
BLACKWINGの鉛筆、定番ラインナップ4種
BLACKWINGには、定番となる4種のラインナップが存在し、それが「602」「Matte(マット)」「Pearl(パール)」「Natural(ナチュラル)」です。
それぞれ鉛筆の硬度が異なっているので、順を追って見ていきましょう。
「Natural(ナチュラル)」エクストラファーム(最も硬い、HBに相当)
「602」ファーム(やや硬い、Bに相当)
「Pearl(パール)」バランス(やや柔らかい、2Bに相当)
「Matte(マット)」ソフト(最も柔らかい、3Bに相当)
「Natural(ナチュラル)」の書き味
最初にご紹介する「Natural(ナチュラル)」は、鉛筆の硬度でいうと「最も硬い(エクストラファーム)」モデルで、主に筆記に向いた一本です。
一般的な鉛筆の硬度でいうと「HB」に相当し、筆記時の文字の濃さは薄めです。
その分、鉛筆の芯は削られにくくなっており、削る回数が他のモデルに比べて圧倒的に少なく済みます。
実際に文字を書いてみると、直線が特に書きやすく、画数の多い漢字などを書くときに向いていると感じられます。
また、文字に光が当たると鉛が輝いたように見えるのもポイント。
最も美しい文字を書けるのが、ナチュラルのメリットです。
軸には北米産のインセンスシーダーが使われており、自然な風合いで、手触りのよい一本です。
デメリットとしては、「HB」相当の硬さのある鉛筆なので、やや筆圧が必要になるという点です。そのため、長時間の筆記には疲れやすさがあります。
手紙や伝達メモなどの短い文章を鉛筆で美しく書く、清書したいときに使いたい鉛筆ですね。文字が一番映えると思います。
おすすめ度:☆☆☆☆
「602」の書き味
BLACKWINGの看板モデルともいえる「602」。”Half the Pressure, Twice the Speed”の謳い文句通りに、滑らかな書き心地で、最も均整のとれた一本です。
「602」の硬さは「ファーム(やや硬め)」で、一般の鉛筆では「B」に相当する硬度です。
無駄な力を入れずに筆記ができるので、自然と文字がすらすら書ける。そんな魔法の一本です。
この鉛筆の優秀な点は、筆記のための絶妙なバランスが取れているという点にあって、はじめのうちはその良さに気がつきにくいかもしれません。
しかし他のモデルと書き比べをしたときに、「一番長く使いたい鉛筆はどれか?」と言われると、やはり「602」になるのではないかと思います。
筆圧が少なくて済み、なおかつ、美しい筆記ができる。その究極のバランスを追求したモデルが「602」だと感じました。
BLACKWINGの歴史ともいえる「602」を冠しているので、やっぱり一度は使ってみたい、王道モデルです。
とくに小説を書くという目的でしたら、長時間の筆記にも耐えうる、書き心地の滑らかな「602」がおすすめです。
おすすめ度:☆☆☆☆☆
「Pearl(パール)」の書き味
ホワイト×ゴールドのデザインが目を惹く「Pearl(パール)」。
硬度は「Balance(バランス)」で、やや柔らかめのタッチです。
一般的な鉛筆の基準で言うと「2B」に相当するモデルで、パールの特徴は、筆記とデッサンの両方に使える点にあります。
文字を書いても申し分ありませんし、絵を描くときにも使えるように柔らかな硬度を実現しています。
文字を書くのも、絵を書くのも「両方」やってみたい。そんな欲張りな方におすすめするモデルが「パール」です。
音楽関係の方が楽譜を書くときにも、こちらのモデルが向いているかなと思います。音符を書いたり、譜面への書き込みも、どちらも対応できるでしょう。
デザインもピアノの白鍵のように美しく、筆圧も少なくて済むので主に女性の方におすすめする鉛筆です。
おすすめ度:☆☆☆
「Matte(マット)」の書き味
シンプルで引き締まった印象を与える、ブラック×ゴールドモデルの「Matte(マット)」。
硬度は最も柔らかい「ソフト(Soft)」で、一般の鉛筆で「3B」に相当します。
実はこの「マット」が4本中、一番面白い書き味をしていて、線や文字の表情が最も細かく変化する一本です。
もともとはデッサンに最も向いたモデルなのですが、この書き味は、一般的な鉛筆にはないものなので、使ってみて一番驚く一本だと思います。
最も柔らかい硬度のため、すぐに鉛筆の先が削れてしまうデメリットはありますが、削った直後の書き味は飛び抜けています。
ある意味では一番のダークホースともいえる一本で、試すだけの価値はあります。
これまでにない書き味の鉛筆に出会いたい、アートに使う鉛筆が欲しいという方に、「Matte(マット)」のモデルを勧めます。
おすすめ度:☆☆☆☆
短くなったら「Pencil Extender(ペンシル・エクステンダー)」を
BLACKWINGの鉛筆を長く愛用していると、先端から短くなり、鉛筆を握る位置が狭まっていきます。
そんな時に役立つのが「Pencil Extender(ペンシル・エクステンダー)」です。
こちらの製品はBLACKWINGの鉛筆専用のアイテムで、使い方は鉛筆の最後尾にある消しゴムを外して、そこに専用のペンシル・エクステンダーを嵌め込むだけ。
ペンシル・エクステンダーを使えば、BLACKWINGの鉛筆を最後まで使い切ることができ、かなりお徳に使えます。
エクステンダーを付ければ、ほぼ新品同様の長さで使えますので、ちびてしまったBLACKWINGの鉛筆をすべて蘇らせることができます。
デザインもスタイリッシュで、どことなく魔法のペンのように見えますね。
BLACKWINGは一本あたりの値段が、通常の鉛筆の3倍はする高級鉛筆になりますので、ぜひこうしたエクステンダーをうまく活用して最後まで使い倒してみてください。
BLACKWINGの鉛筆を使うなら、必需品リストに加えたいアイテムです。
おすすめ度:☆☆☆☆
外出時は「Point Gurad(ポイントガード)」でペン先を保護
また、BLACKWINGを外に持ち出す際に、忘れてはいけないのが鉛筆キャップです。
BLACKWINGのモデルカラーとサイズにぴったり合うように作られた専用キャップが「Blackwing Point Gurad(ポイントガード)」です。
カラーバリエーションは、「ブラック」「ゴールド」「シルバー」の3種あり、お好きな色と鉛筆を組み合わせて使うことができます。
ひとつ持っておくと外出時の執筆に何かと便利ですので、BLACKWINGの「ポイントガード」のキャップを勧めます。
僕は、ノートのペンホルダーにBLACKWINGの鉛筆をセットしていて、その際にペン先にこの「ポイントガード」を装着しています。
純正なので安心感があり、BLACKWINGの鉛筆がよりフィットする形で使えます。デザインも統一感がありますね。
おすすめ度:☆☆☆
番外編 BLACKWING「ワンステップシャープナー」が優秀すぎる件
これまでBLACKWINGのアイテムをご紹介しましたが、これらと併せてぜひ使ってみて欲しい製品があります。
それがBLACKWINGの「ワンステップシャープナー」です。
ボディは六角形のアルミの削り出しで、鉛筆削りらしからぬ無骨なデザインが目を惹きます。
鉛筆の先端をセットして、数回捻るだけで、毎回、ほぼ完璧な角度で削ってくれるので、鉛筆での執筆がノンストレスになります。
持ち運びにも便利なコンパクトサイズで、机の上に置いておくにも邪魔になりません。
裏技的な使い方ですが、鉛筆を一本立てておくための鉛筆立てにも早替わりします。
機能・デザイン・利便性において、これ以上に優れた鉛筆削りを他に知りません。
他社製の鉛筆をお使いの方も、ぜひBLACKWINGのワンステップシャープナーを使ってみることをおすすめします。
おすすめ度:☆☆☆☆☆☆(鉛筆以上に勧めたくなる、鉛筆削り)
まとめ 「伝説の鉛筆」の復刻版をBLACKWINGで楽しむ
BLACKWINGの鉛筆は今回ご紹介した基本モデル以外にも、アーティストとコラボした限定モデルなどもあります。
過去の偉大な作家やアーティストになぞらえて、執筆生活を楽しむのもいいかもしれませんね。
それでは、よい「もの書き暮らし」を。
(了)