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一馬日報(手記) 文芸活動記録

『毎日のルーティンを決めた話』

取りあえず書き出したルーティンを壁に貼ってみた次第。

 こんにちは、kazumaです。まだ文章は打てるらしい。

予期せぬ位置に打たれるピリオド、白内障覚書

 先日、白内障に罹り、左目がかすむようになってしまった。手術をすればこのかすみは取れるらしいが、視力がまだあるので手術をすべきかためらっている。定期検査を受けることになり次回は三ヶ月後の十二月。

 左目で本を読もうとした時に愕然とした。僕が信じてきたものはこんなに脆く、一見関係のないように見える外的な出来事のためにいままでの日常が簡単に消え去るのかと、おののいた。何の意味もなさない読み取り不能な文字の羅列は、文字通りただの染みに過ぎなかった。あれだけ親しんだ言葉の連なりは、僕の全く知らない暗号に変わってしまった。幼児が四六時中手放さないでいたぬいぐるみを、誰か知らない大人に突然取り上げられてしまったときみたいに。

 その瞬間に、僕は思った。無限に書き続けていられると思っていたものはそうではなく、有限で、際限なく読み続けられると思っていたものは、自分以外の何者かによって予期せぬ位置にピリオドを打たれ、本人の意志とは関係なく、いとも簡単に終わるのだと。

思い返してみれば……

 以前の仕事は毎日ほぼ六時間ぶっつづけでパソコンを見ながら作業していた。何らかの負荷が掛かっていたのかもしれない。僕は以前の会社でも辞めるときに何らかの病を患って辞めた。大学の頃は、精神系の病をやり、そのときは両手両腕が塩素系の薬剤に掛かってぼろぼろになっていた。スニーカーのスエード生地に付いた異様な色のシミのことを僕はまだ覚えている。友達には笑われたが僕はちっとも笑わなかった。翌日も僕はその靴を履き続け、ボロボロの手でボールペンを握って授業を受けた。

 昔の友人に、お前は暗くなったと言われ、大人になったあとで街中で指を差して揶揄された。僕はそうやって通り過ぎていく人間たちの顔を、もう決して友人とは認識せずに黙ってやり過ごした。他人の人生を、平気で革靴の底で叩き、踏み潰して歩く人間に話すことなど何もないような気がする。

 病の再燃、アトピーの発症に続き、今度は眼をやってしまった。何だか僕は最低賃金と引き換えに取り返しのつかないものを次から次へと失っていく運命にあるらしい。もうこんな馬鹿げたことは沢山だった。僕は会社という組織の中で生きていくことをやめた。元々、精神疾患のハンデがある中でこれ以上続けていくことは限界に近かった。僕はひとが歩いていく道と同じ道を歩めない種類の人間だった。残されているのは獣道だけだった。

見知らぬ別れ道に入り込む前に

 世の中はいまコロナ一色で、誰にも先は見通せない。職を失い、友達を失い、左目さえある意味では失った中で、いまできることはいまやらなかったら、何かが間に合わないような気がした。

 僕は何となくだけれど、獣道だろうが何だろうがとにかく生き延びて、ライターの仕事なり、古本の仕事なり、つなぎのアルバイトなりを続けて、ひとの目を忍び、この世の端の端の端で、お爺さんになるまでものを書いて生きていくのだと思っていた。事実そうするつもりでいるのだが、問題はそれを現実の方が許すかどうか、まったくもって分からないということだ。

 明日には突然、ものが見えなくなるかもしれない、本を読んだり、文章を書いたりすることができなくなるかもしれない。はたまた市中感染に遭い執筆どころではなくなるかもしれない。金銭面で生活にあえぎ、筆を折るどころか首の骨まで折ってしまうかもしれない。そういう可能性はいま現実にすぐそばにあって、ただ運よくその分かれ道に入っていなかっただけなのだと。

 退職にあたってルーティンを決めた。ひとりで生活していくのなら、集団で生活する以上に規律が必要だ。手順をいちいち考える手間も省けるし、今日は何をすればいいんだっけと迷うこともない。箇条書きで記してみる。

今後毎日行うルーティンについての一考察

・毎朝、6時半から7時半の起床

 朝の時間は執筆にはいちばん貴重な時間なので。毎朝、決まった時刻に起きることがズレてしまったら、簡単に一日のスケジュールは崩壊する。規律のないところに生活は成り立たない。

・起きたら必ず窓を開けて換気

 空気の入れ替えは、感染症対策の意味もあるが、精神面でのメリットが大きい。閉じたままでは空気が淀んでいく。精神面でも停滞していく。外部の音が聞こえて、外の風が入ってくることは、ひとりぼっちの部屋に外と繋がっている現実感を与えてくれる。カンヅメは締切前の作家がやればいい。僕はいやです。

・シャワーを浴び、身支度を整える

 もう書かなくても自明なくらいの習慣になっているけれど。起き抜けは寝癖がひどいので、シャワーを浴びて直すようになったら、かれこれ七年くらい続いてしまった。眠気覚ましの意味合いもある。自分の部屋で過ごすにしてもきちんとした服装を着ることは、執筆する上でもそれなりの意味がある。執筆前の準備というかイニシエーションというか。実は外には着ていかない作家ごっこのジャケットがあるのだけれど、時々誰もいない部屋でこっそり羽織ったりしている。

・wi-fiなどすべての通信機器の電源、接続を落とし、机に向かって執筆開始。

 インターネットを見ながら小説は書けません。大事なことなのでもう一度言います。インターネットを見ながら小説は書けません。自戒です。MacだろうがiPadだろうが、iphoneだろうが、執筆中は一旦、回線ごと闇に葬ってください。少なくとも僕は無理です。通信ごと遮断する袋があるので、小型機器にはそれを使ってます。執筆時の机の上はノートと万年筆、そしてインターネットの概念がないポメラ、以上です。

・執筆後に朝食、プロテインやサプリメント類を摂取。

 単純に朝飯前にしておいた方が集中しやすいので。食後はプロテインなどを取ると書いてますが、とくに現在、体育会系とかそんなことはなく。タンパク質の不足がメンタル面にも影響する可能性があるとかないとか言われてますね。メンタル面をやっているので、僕はドーピングでもしないとおそらくまっとうな連中には勝てません。どんな手を使ってでも不調が回復するならそれでよいと考えています。

・柔軟や自重の筋トレ、散歩〜ジョギング程度の軽度な運動をする。

 執筆時間やパソコン作業の時間が長引けば長引くほど、一日の運動量が減ってしまうので。ちょっとだけでも体を動かしていると、結果的にものを書く体力を作ることにもなっていきます。往年の村上春樹さんみたいにばりばりのランナーではなくとも、自分のペースで動けていたらそれでいいのかなと。

・日中は書房の運営、ライティングの案件を片付ける。

 日中はお仕事です。個人の時間と切り分ける意味もあります。

・書房は一日一冊、ライティングは一日一案件を目標に。

 とりあえず、はじめて何かに取り掛かるときのハードルは低くしてやっていこうと思っています。とはいえ、塵も積もればなんとやら。書房の方は、はじめ思い描いていたサイトに徐々に近づいてきたなと思います。ライティングの方はまだまだこれから。

・必ず一回は外出すること(コンビニ・スーパーの買い出しでも可)

 一日中部屋にこもり続けても、一応生活はできるんですけど、やっぱりロクなことにはならないですね。どれだけ一人が好きでも、一回くらいは外の空気を吸っていると、いい意味で変わってきます。別に執筆のお供のおやつを買いに行くのでもいいですし、人目を忍んで夜中にコンビニまで歩くのもあり。病院へ行くのだって立派な外出ですから。

 何か目的があって出かけるといちいち迷わずに済みます。余裕があればちょっとだけ寄り道して本屋や古本屋へGO、です。あと河川敷はひとが少ないので、僕みたいな人間嫌いにおすすめのスポットです。人混みは可能な限り回避するルートを選びます。

・執筆スペースや書房の本に埃がつかぬようまめに掃除する

これも執筆前の下準備のつもりで。書房の本に関しては、人様への売り物なのでなおさらです。僕がネット書店で働いていた時に目にするクレームで多かったのは本の状態そのものを除けば、本に付着していた異物でした。なるべく、というか、ぜったいにそういうクレームをもらいたくないので、気をつけます。

 大抵、部屋が荒れている時には精神が荒れています。たまに、坂口安吾や「のだめ」みたいな天才肌もいますが、ああいうのは半分フィクションだと思っています。一般人に当てはめて良いものではありません。

・読書はスキマ時間にちびちびと

 以前は通勤電車の行き帰りでよく読んでいました。病院の待合などもいいですね。スマホを触っている人をよく見かけますが、案外その時間で読書ができたりします。僕はラウンドジップ型の全面を覆うタイプのポーチに文庫本を入れて持ち歩いています。文庫タイプのカバーが好きで五、六枚を入れて使いまわしていますね。もっとも青系の色が好きなので似たような色ばかりですが。ちびちびと味わうように読むのがいちばんぜいたくな読み方です。文庫本は日本が生み出した最良の形だと思っています。ペーパーバックのざらしみたいな紙質ともぜんぜん違いますし。

・SNS、スマホアプリ等の過度な利用は控える

 これは僕の悪い癖なんですが、どうも情緒的に不安なときってTwitterなんかだとついつい連投してしまうんですよね。それも長文のやつを何回も。わかっててやってるんなら全然いいんですが、無意識でやっている時は文章を打っているというより、打たされているという感覚に近いんです。それで何か言った気になって、いいねもつけばそれで満足かもしれませんが、実際の原稿がまったく手についていなかったり、日頃のケアを怠って体調を崩してしまうのは本末転倒かなと。

 僕の勝手なイメージですが、Twitterなど外部のSNSを頻繁に駆使して作品の外で論説していくタイプの作家よりも、Twitterなんてまったく使わないか、ほとんどひとことだけ呟くようにして使っている作家の方が何となく信頼できる語り手のように見えるのはなぜでしょう。といってもついつい使っちゃうんですけどね。わかります、僕もそうです。スクリーンタイムを確認して愕然とする前に一時間以内くらいに収めたいところではあります。僕は代わりにブログでぶちまけるようにしました。

・夜間(日中のルーティン終了後)、二回目の執筆時間。

 この時間は何を書いてもいいようにしています。朝に書いた小説のつづきでもいいし、日々のことを綴った個人的な日記でもいい。ブログ記事で好きなことを好きなだけ書くこともありますし、書房にアップするデータを書いていてもいい。なんでもあり。そういう自由度を持たせておくと、モチベーションを保ちやすい気がします。

・20時服薬、22時就寝(但し、筆が乗る場合はこの限りでない)

 僕は毎日服薬している安定剤兼眠剤のような薬があるのですが、これがないと眠れないし、日中も飲み忘れると情緒不安定になります。ただでさえ精神がプディングとか豆腐だとかやわやわにもかかわらず、飲まなかった日には土台ごと揺らいでいく感じです。一瞬、それでも副作用からは解放されるので、一日だけ自由に動きたいだとかそういう最後の切り札的には使えますが、そのあとは早晩確実に潰れてしまうので定まった時間で毎日常用します。

 22時就寝は早すぎる、と思われる方がいるかもしれませんが、精神的な面を考えると無理は禁物で、確かにこれくらいの時間に布団に入っておいた方が翌朝が自由に動けます。脳みそもぎりぎりクリアです。といっても、僕は元々が夜型の執筆タイプでしたし、夜中の三時を回ってあかりがついていることもありました。筆が乗ってきたら、止まらずにいくし、止まるべきでもありません。行ける時にはいきましょう、無理な時は無理せずです。

・就寝時はスマホ等をシャットダウンし、遮断袋に入れて引き出しにしまう。

 入眠時の妨げになるものランキング、不動の第一位なので、さっさと電源を落として寝るのが吉です。人為的に潰せるものは、潰しておきましょう。あとwi-fiとかの通信を落とした時に胸がすっとするのは僕だけですかね。頭の痛みなんかも引くように思えます(なんでだろ、いまだに謎)。

・生きることがつらくなったら以上のことは全で無視して、好きなだけ好きなことをする。

 はい、ここが一番重要です。人生そのものがつらくなったら、毎日のルーティンなんてさっさと放り投げていいんです。そういうときに必要なのは、この世界はしんどいことだらけだとか義務だらけで縛られている、ああいやなことだけれどやらなければいけない、とかそういうことじゃないんです。もっと自分がほんとうにしたかったことをするために生きているという感覚を取り戻すことです。ヤなことばっかりだけど、これは誰が何と言おうと楽しいってことを思い出すことです。

 僕は小さい頃から塾に入れられて、受験勉強に明け暮れていた時期があります。その頃、周りの子供たちはみんな公園を走り回って、フェンスの向こう側のグラウンドでボールを蹴ったりしてなにやら楽しそうでした。教材のテキストでいっぱいの塾のカバンを持ちながらとぼとぼと歩く少年の頃のぼくには、彼らの顔がほんとうに生き生きして見えるんです。受かってから、ボールを蹴ってみたりもしたんですが、やっぱり違うんですね。何度もフェンスに向かって蹴りました。でも僕はその時に、その場所で、みんなと一緒にボールを蹴っていたかったのです。やりたかったことを後に回したら、もうあとはひたすらボタンの掛け違えしか起こらないんです。

 だからもしどんなことでもやりたいことを見つけたとわかったときには、その瞬間をぜったいに逃しちゃいけないんです。それが周りの大人がダメだと言おうが、世間が許さないと言おうが、親が禁止しようが、友人たちが引き止めようが、そういうものを全部ひっくり返してでも、やりたいことのある方向へ進んでいかないと、この人生そのものが前には進んでいくことはおろか、いずれおそかれはやかれその人生を送るひと自身が窒息してしまうように思うんです。だからそういうときには、自分を延命させる措置だと思って、他のことは全部無視して好きなことだけをやる時間をつくりましょう。僕はそれがものを書くことと読むことだと信じていたからここまでやってこれたのでした。

最後の方は駆け足になってしまいましたけれども、以上がルーティンについてのお話、でした。

kazuma

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